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山登りはきらいだ


映画「クライマーズ・ハイ」を観に行きました。
タイトルを聞くと何を題材にした作品か、判りにくいよね(苦笑)
日航機墜落事故を題材にした新聞記者の話です。
今回も例によってネタバレ感想。








群馬県の地方新聞社を舞台に、
一匹狼記者である主人公が、日航機墜落事故をどう扱うか
社内での軋轢、陰謀、思惑などに屈することなく
自分が思う道を突き進もうとする、社会派映画です。
こういう映画を自分が観に行くのは我ながら珍しいんだけど。

あの事故は当時9才だった自分の脳裏にも刻み込まれてます。
しばらく飛行機飛ぶのを見るの怖かったもんね。堕ちるんじゃないかって。
だから事故当日の現場の右往左往ぶりとか情報の錯綜っぷりとかが
今見ると新鮮に思えたり。実際こうだったんだろうなあと興味深く。

面白い映像になってて、まるでドキュメンタリーのような作品でした。
カメラが手ブレしてるように画面がわざと動いてたり
遠くから覗き見るように遠距離から撮影しているかと思ったら
人物の表情のUPが差し込まれてたり。
視聴者が現場にいるかのような、臨場感を体感できる映像つくりをしてる印象でした。
それと、新聞社内の場面ではあちこちで色んな仕事をしている人たちが
雑多に動きしゃべり声を荒げている風景がかなり時間とって映されていて、
とても猥雑で雑然とした印象を受けるなか、
画面の中心に居なかったメインの人物がおもむろにセリフを話し出したりするから
この作品はリアリティを大事にしてるんだなって思えました。
(この人が喋りますよー、っていうわざとらしい演出がない)
セリフ回しも極力ナチュラルに…多数の人に聞かせようとしてるんじゃなくて
目の前の相手1人に伝わればいいレベルの、ぼそぼそっとした言い方をしてくるので
それもまたリアリティ。冒頭の山登りに関する説明が全然分からなかったくらい(苦笑)
新聞社周辺に関するドキュメンタリー性は高いと思いました。

主人公は山登りをするので取材が時に山登りに例えられる。
ベテラン記者と初スクープを狙う新米記者はザイルで繋がってるんだ、とか。
タイトルのクライマーズ・ハイっていうのは要するにランナーズ・ハイのことで
山の頂点目指してると急に気分も身体も高揚するって意味だと思うんですが、
その、大きな事故に関する記者たちの記事に対する思い、昂ぶった念みたいなものが
新聞記者にとってのクライマーズ・ハイなのかな、と捉えられました。
それだと主人公は途中でハイ状態が冷めてしまったことになるな…
それで合間あいまに挟まれる、22年後のやり直し登山のシーンに繋がるのかも。
山登りの状況から事故当時の状況が連想されて回想、って展開になってたので。
登山をやり直すことで当時の心境を整理していたのかもしれないです。

1985年ごろの小物や衣装の表現はしっかりされてて、
ここにもリアリティ追求姿勢が。スチュワーデスの衣装たぶん当時のものだw
(空港などのモブシーンに映る人たちに衣装も80年代になっててスゲーと思った(笑))
最近の過去回想作品における小道具追及姿勢にはアタマが下がりますw

個人的には主人公の家族とか倒れた友人の周辺とかに
ちょっと時間割きすぎじゃないかなとは思ったな…
でもそれを描いておかないと社長に目をかけられて周囲には疎まれて、
という主人公の立場の描写が薄くなってしまうか…。
まあ~主人公がいち個人として悩む姿が横糸としても
縦糸の事故を巡るドタバタが映える、というわけでもなかったようなんですけどね。
新聞社の奮闘を見せたかったのか、
主人公の孤独の悩みを描きたかったのか、やや曖昧。
両方だとしたらもうちょっと事故に絡めてこないと。うむむ。
(そして最後まで息子は生きていたのか死んだのか分からなかった自分…;
何度もでてくるジュンって名前は息子で良かったっけ?;)

主演の堤真一氏が重厚な存在感を放ってました。
役者萌え(燃え?)ができそうw
目当ては堺雅人氏(Yシャツネクタイで山登り挑むな!(爆)w)だったけど
泥だらけになって山を登った迫真の演技、記事が載らないと分かったあとの睨む目線!
あれは真骨頂でしたな~。
ただやはり重みある存在感は堤氏に敵わなかった。食うかと思ってた。
ラスト近くの遺書を淡々と朗読するくだりは泣けました…
堺氏の淡々具合がさらに涙腺直撃。

見終わって最初に思ったのが
「権力が絡んだ男性の嫉妬ほど見苦しいものはない」(苦笑)
いやー、オトコのイヤな面をがっつり見せ付けられた気がしてさ…(汗)
原作もこうなのかなと思ったら小説読まなくてもいいかなと思えてきました(^-^;)
利権やプライドが絡んだ会社員のドロドロ人間関係って怖いね(苦笑)

さておき日航機墜落事故を側面から眺めるには
良い教材というか作品になっているのではないでしょうか。
堤真一氏のFANと社会派ドラマがお好きな方にはオススメです。
(遺体を目の当たりにして突っ走ってしまった男性記者は
明らかに神経病んでしまっててとても可哀相でした…熱演に拍手。)

by katuhiro-iyama | 2008-07-17 00:57 | 映画話 | Trackback | Comments(0)


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